こんにちは。F1班です。
早いものでこの記事を書いている時点で2011年もあと3時間です。
今年を振り返ってみると、1月はゼミの論文を書き、2月~6月は就活で、7月以降はこの卒論研究と、常に何かに打ち込んでいた、とても良い年でした。来年もそんな年にできればとおもいます。
今回は前回統計に詳しい先生のご指導から気付かされた先行研究について、その探し方と、整理の仕方をご紹介します。
前の草野の記事でも書かれていますが、学者にとっての研究の価値とは「巨人の肩の上に乗る」というように、先行研究の蓄積+α、このαの部分です。
αの価値は先行研究をどれだけ読んだか、そしてその研究を整理して理論的に重要な命題を提示できるかどうかにかかっていると言えます。
F1班は今までに少なくとも50本ほどの論文を読んできました。
ほとんどが英語の文献なのですが、これだけの数を無駄なく集めるにはちょっとしたコツがあります。
大学生の卒業研究には時間的な制約があります。
4年生の1年間でどこまでいいものが作れるかという勝負とも言えるでしょう。
その限られた時間で先の良いαを生み出すためには、むやみやたらに論文を読みあさるより、興味のある分野に限定して読むべきです。
無駄な論文をなるべくつかまないようにするには、
①被引用件数の多い論文を読む
②最近の論文を読み、その参考文献から芋づる式にさかのぼる
③レビュー論文を読む
これら3つの方法が効果的だと考えています。
まず①についてですが、被引用件数とはその論文が後の研究でどれだけ参照されているかを表す数字です。
この数字が多い事はつまり、その論文が当該分野で絶大な存在感のある研究だということ。
その論文を読めばその分野で何が議論のベースとなっているかをうかがい知ることが出来るんです。
これを読むことでその後に読む論文を理解するのが簡単になります。
ちなみに、私たちの場合はRottenberg (1956)がこれにあたります。
彼は戦力均衡の概念を一番初めに提唱した人で、ほとんどの研究者が彼の研究を引用していました。
つぎに②について。
最近の研究を読んでその参考文献から過去にさかのぼってゆく最大のメリットは、すでに言われていることを把握しやすい事です。
逆に、古い研究から近年へ向けて読み進めていった場合、時間切れや検索できないといった理由から最新の研究までたどり着けない恐れがあります。
すると、自分たちが2000年までの先行研究を読んで、新しい理論を提唱する論文を書いたとします。
しかし、2010年にすでに同じことが言われていた…
もしくは、2008年の研究も読んでいたらもっと面白い理論がつくれた
なんてこともあったかもしれません。
また、新しい研究には古い研究に比べて先行研究のレビューの幅も広がっているかもしれません。
つまり、新しい論文から過去に向かって読み進めることで自身のαの新規性が高まる可能性があがるんです。
③のレビュー論文とは、先行研究を整理することを主眼に置いた論文のことです。
20ページ近くに渡って先行研究の整理をしているレビュー論文は、自分たちで整理するときのとてもいいお手本になります。
ものによっては100本近い先行研究の整理を行っているので、そこから芋づる式に参照してゆく糸口ともなります。
さて、先行研究の探しかたをご紹介しました次はその整理法です。
過去の研究を体系的に整理すると何が良いかというと、
その分野で現在議論されていることの課題が見えやすくなることだと思います。
例えば組織学習研究の課題は何かと問われても、範囲が広すぎて明確な課題を見つけるのは大変です。
しかし組織学習研究を「自社の過去の経験から学ぶような『直接学習』」、「他社の経験から学ぶような『間接学習』」といったように体系的に整理できれば、
過去の研究の問題点をシャープにすることができます。
が、何をすればいいかという正解はありません。
自分たちの言いたい仮説を先行研究から導き出すことは本当に困難な作業でした。
私たちの場合は、仮説が「上位均衡やスター均衡であればファンの関心が高まる」というもので、先行研究で「全体均衡ならファンの関心が高まる」ことまでいわれていました。
となると「全体ではなく一部の均衡がファンの関心を高めるかもしれない…」と先行研究から導く必要があります。
そこで、違う分野の研究で使えそうな主張をしているものを探し当てることでこの問題を解消しました。
具体的に説明すると…
まず「戦力均衡がファンの関心を高めるという研究」「戦力均衡がファンの関心を高めないという研究」に分けて整理することからはじめ、
戦力均衡度合いを測る指標は何かという軸、調査の対象となるスポーツは何かという軸など、
いくつかの軸で過去の研究を体系的に整理してみました。
すると、過去の研究は野球やサッカーなど1対1で争うスポーツばかりが調査の対象となっており、
F1のような同時に競争する形態のスポーツは取り上げられてこなかったこと、
さらに、戦力均衡がファンの関心を高めることを支持しない研究では、
「今までの研究ではファンの特定の選手への愛着といったような心理的側面を考慮できていない」
といった指摘がなされていることがわかりました。
これで戦力均衡研究の課題が明確になりましたね。
整理だけにひと月かかったくらい大変な作業です。
(正解がないから大変なんですよ!)
これを読んでいる皆さんも、卒論を書くとなった時には先行研究が一番大事で一番難しいところだって
思い出してくださいね。
A Happy New Year !
くさの たまき
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